Research Results 研究成果
ポイント
ウランなどの核分裂は、原子核の内部构造のため、大小质量の异なる2つの核分裂片に分裂する非対称核分裂をします。一方で、原子核の励起エネルギーが増加すると、内部构造が弱まり、ほぼ同じ质量の2つの原子核に分裂する対称核分裂になることがわかっています。
概要
原子核の核分裂は、原子力エネルギー利用を支える基本的な现象であり、また基础科学においては超重元素の存在限界を决め、天体において、鉄より重い元素が作られる核反応过程に影响を与えるなど、重要な现象です。そのため、核分裂は原子力エネルギー利用と科学的重要性から80年以上研究されています。
原子核を「电荷を帯びた液滴」と考える古典モデル(液滴模型)では、核分裂によって2つの等しい质量の核分裂片が生成します。一方、原子核の中では、中性子や阳子の运动に由来する殻构造のため、原子核は大小2つの质量の异なる核分裂片に分裂する経路(モード [1])が発达していることがウラン(236鲍)などで知られています。ところが、原子核に励起エネルギー(原子核の温度)を与えると、殻构造が消灭して非対称核分裂モードが消え、古典モデルのように振舞い、2つの等しい质量の核分裂片ができます。
本研究では、人类が利用できる最も重い元素であるアインスタイニウム[2](254贰蝉、原子番号99)を用いた核反応でメンデレビウム[3](258惭诲、原子番号101)を生成し、この核分裂を调べました。258惭诲は、254贰蝉より重い元素で、かつ多くの中性子を持った原子核(中性子过剰核)です。258惭诲は、254贰蝉を标的とし、タンデム加速器[4]から得られる高エネルギーのヘリウム(4He)ビームを254Esに照射して生成しました。実験では生成された258Mdからの2つの核分裂片の質量数と運動エネルギーを決定しました。実験の結果、図1に示すように258Mdの励起エネルギーを15 MeV から18MeVに上げると、大小2つの核分裂片を生み出す非対称核分裂モードが増加することを発見しました。この発見は、従来のウランなどの核分裂の常識と異なる結果です。この現象は、超重元素や中性子過剰核の核分裂の特徴をとらえたものです。この現象を追求することで、元素の存在限界や、宇宙で元素が生成される仕組みの理解が深まると期待されます。
本研究は国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 小口正範、以下「原子力機構」)の西尾勝久研究フェロー、廣瀬健太郎研究副主幹、塚田和明研究主席(現?東北大学)、岡田和記特定課題推進員、 近畿大学の有友嘉浩教授、東北大学の岩佐直仁准教授、九州大学の坂口聡志教授 他による成果です。
本成果は、アメリカ物理学会の国際学術誌 「Physical Review C」 のオンライン公開版(4月21日(現地時間))に掲載されております。
図1 核分裂片の质量数と运动エネルギー面におけるメンデレビウム核分裂片の分布。核分裂片が持てる最大の运动エネルギーも示す。
用语解説
[1] 核分裂のモード
核分裂は原子核全体が持つポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)の極小値、すなわち谷間を転がるように進みます。この道筋(経路)をモードと呼びます。原子核の内部構造に起因してポテンシャル曲面は複雑で、モードは複数個存在すると考えられており、これを明らかにするのが核分裂研究の課題のひとつとなっています。図2は低い励起エネルギーでのポテンシャル曲面の例で、左は質量数が257以下の原子核に現れる非対称モード、右が258以上に見られる対称核分裂モードを表しています(Y. Miyamato他, Phys. Rev. C 99, 051601(R) (2019) から引用)。
[2] アインスタイニウム
著名な物理学者であるアルベルト?アインシュタインの名前に由来する99番目の元素であり、原子炉の中で生成されます。本研究で使用した254Esは、核反応実験に使う標的として最も原子番号が大きく、かつ中性子数の多い同位体です。254Esは米国オークリッジ国立研究所(ORNL)にあるHigh Flux Isotope Reactorにおいて、日米協力によって本研究用に特別に作られました。
[3] メンデレビウム
元素の周期表を発见したドミトリ?メンデレーエフの名前に由来する101番目の元素であり、加速器からのイオンビームを用いた核反応によってのみ合成することができます。
[4] タンデム加速器
静电型加速器であり、ターミナル部分の高电圧を利用して、イオンを加速します。原子力机构のタンデム加速器(図3)はターミナル电圧2,000万ボルトと、世界で最大の电圧を発生することができます。
図2 原子核のポテンシャルエネルギーと核分裂モード
図3 原子力机构タンデム加速器の原理(左)と施设外観の写真(右)
论文情报
雑誌名:Physical Review C
タイトル:Competition between mass-symmetric and asymmetric fission modes in 258Md produced in the 4He+254Es reaction
著者名:K. Nishio, K. Hirose, K. Tsukada, K. Okada, Y. Aritomo, N. Iwasa, S. Sakaguchi 他26名
所属:日本原子力研究开発机构、近畿大学、东北大学、九州大学 他
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