Research Results 研究成果
ポイント
概要
名古屋大学大学院理学研究科の貴嶋 紗久 研究員(現 産業技術総合研究所生物プロセス研究部門 研究員)、佐々木 武馬 助教、理学部の菊島 悠一郎 学部生、小田 祥久 教授の研究グループは、九州大学大学院芸术工学研究院の井上 大介 准教授、大阪大学大学院理学研究科の近藤 侑貴 教授、東京大学大学院理学系研究科の稲垣 宗一 准教授、産業技術総合研究所生物プロセス研究部門の坂本 真吾 上級主任研究員、光田 展隆 副研究部門長、埼玉大学大学院理工学研究科の山口 雅利 准教授との共同研究により、植物が細胞壁注1)の构造を制御する新机构を明らかにしました。
本研究グループは、シロイヌナズナの道管の細胞壁の構造に異常を示す変異体を新たに単離。その原因遺伝子KNAT7が フォルミン11(FH11)遺伝子の発現を抑制していることを突き止めました。KNAT7が機能しなくなると、FH11の発現が上昇し、FH11タンパク質が過剰に作られていました。FH11は細胞膜上でアクチンの重合を促進し、アクチン繊維注2)が増加、それにより道管の细胞壁の构造のタイプが変わってしまうことが判明しました。つまり、植物はアクチンの重合量を调节することにより细胞壁の构造を制御していたのです。
植物の细胞を覆う细胞壁は、细胞の形、さらには叶や根の成长や、さまざまなストレスへの対応など多様な机能を担います。本研究の知见を応用して植物の细胞壁构造を人為的に制御することにより、収穫しやすい形态の植物や、乾燥ストレスに强い植物を作り出す技术につながると期待されます。
本研究成果は2025年2月26日付英国科学誌「Nature Communications」で公開されました。
注1)细胞壁:植物の细胞膜の外侧に形成され、植物细胞の形态や机能を决定づける构造。主にセルロース、ヘミセルロース、ペクチンから成る。道管や仮道管、繊维等の二次细胞壁にはこれらに加えてリグニンが沉着することで疎水的で强固な细胞壁になる。
注2)アクチン繊维:アクチンと呼ばれるタンパク质が重合することで作られる直径8ナノメートルの繊维状の构造。植物细胞では、细胞内の物质输送や细胞内小器官の形态、分布の制御に関わっている。动物の筋肉组织の主要なタンパク质でもある。
论文情报
雑誌名:Nature Communications
論文タイトル:Control of plasma membrane-associated actin polymerization specifies the pattern of the cell wall in xylem vessels
著者:貴嶋 紗久(産業技術総合研究所)、佐々木 武馬(名古屋大学)、菊島 悠一郎(名古屋大学)、井上 大介(九州大学)、坂本 真吾(産業技術総合研究所)、近藤 侑貴(大阪大学)、稲垣 宗一(東京大学)、光田 展隆(産業技術総合研究所)、山口 雅利(埼玉大学)、小田 祥久 (名古屋大学)
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