Research Results 研究成果
ポイント
日常の会话が成立するには、曖昧なことばをうまく解釈する必要があるが、そのメカニズムにはまだ分からないことが多い。その発达过程についても分かっていない。
概要
「この前の件だけど…」と友达に言われて「…どの件?」と戸惑うことがあるように、私たちの日常会话は、曖昧さに満ちています。それにもかかわらず会话が成り立つのは、聴き手が、発话の手がかりをもとに、うまく解釈することができるからです(しばしば失败もありますが)。従来の研究から「时间的な近接性」(时间的に近いものに结びつける)や「顕在性」(状况の中で「目立つ」ものに结びつける)が曖昧な発话解釈の手掛かりになることが分かっていますが、両者がどのように相互作用するのかについては未解明でした。
九州大学大学院人间环境学研究院の橋彌和秀教授と岸本励季学術研究員は、アニメーションを用いた新たな研究パラダイムを開発し、連続するイベントの中で「時間的近接性」と「顕在性」とを操作する実験を行いました。アニメーションでは、キャラクターが一体ずつ順に現れ「楽器を弾く」などの行動をとります。しかしその中で一体だけが他のキャラクターとは明らかに異なった行動(「ボールを投げる」など」)をとります。すべてのキャラクターが提示された後で、「いまのみた?」という音声が呈示され、参加者は、手元のタッチパネルで、「いまのみた?」がどのキャラクターのことを指していると思うか答えるよう求められました(指示対象付与)。他とは違った行動(希少イベント)が出現するタイミングと「いまのみた?」という発話との間隔を操作することで、「希少性」と「時間的近接性」との関係を操作し、指示対象付与への影響を調べました。この課題を成人および子ども(7-10歳)に実施したところ、成人も子どもも、希少性と近接性との両者を考慮して指示対象付与を行いましたが、その方略は成人と子どもでは異なりました。まず、子どもは成人と比較して、「いまの見た?」の発言を、発話直前のイベントに結びつける(時間的近接性を重視する)傾向が強いことが明らかになりました。さらに、子どもにとっては、希少性の効果は時間的近接性と独立して解釈に影響しますが、成人は希少性と時間的近接性とが相互に影響しつつ統合されていることが分かりました。
今回の発见は、希少性と近接性の统合过程が、7-10歳という学童期の子どもであっても成人とは异なることを示すものです。この成果は、コミュニケーションを不得手とする子どもの発达支援や対话ロボットの开発に役立つことが期待されます。
本研究成果はアメリカ合衆国の雑誌「PLOS ONE」に2025年2月13日(木)午前4時(日本時間)に掲載されました。
岸本学术研究员からひとこと
通信机器や厂狈厂の台头もあってコミュニケーションのあり方が急速に変貌し、ヒトのコミュニケーションの本质が问われる中、本研究で明らかになった子どもと成人での発话解釈の违いは、これらの诸问题に一石を投じるものです。将来的には、复数の言语话者を対象に同様の実験を行い、それぞれの言语が持つ特徴と文化との相互作用についても、検讨してみたいと思っています。
実験を実现するにあたって、様々な映像刺激をタブレット操作と连动させるプログラムを自作するのはなかなか骨の折れる作业でした。成果として実り、とても嬉しいです。
図1.5番条件の例。他の怪獣はギターを弾いてから引っ込む中で、5番の怪獣だけが肉を食べて引っ込んだ。この他とは违うことをする怪獣を希少イベントとする。この希少イベントの生起タイミングを、4番から9番の中で変化させた。9番のイベントを直近イベントとする。
用语解説
掲載誌:PLOS ONE
タイトル:Recency and rarity effects in disambiguating the focus of utterance: A developmental study
著者名:Kishimoto Reiki & Hashiya Kazuhide
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人间环境学研究院 岸本励季 学術研究員