Research Results 研究成果
ポイント
概要
血液中の血球细胞のうち、约99%が赤血球であることから、赤血球の変形能は血液动态を特徴づける重要な物理特性です。さらに、赤血球変形能の低下は动脉硬化などの循环器病と関係するだけではなく、血中の合成タンパク质量とも相関することが知られています。そのため、赤血球変形能は血液动态や各种疾病を推定する上で医学的重要な指标となります。従来、细胞の変形能は细胞一つ一つを分析する1细胞検査によって计测されてきましたが、简便性の観点から克服すべき技术的课题が多くありました。仮に、计测が容易な血液の见かけの粘度(マクロレオロジー特性)からミクロ构成要素である赤血球の変形能を推定することができれば、新たな血液検査技术の构筑に繋がるだけでなく、血液以外の様々な粒子悬浊液*3の物性を推定する技术基盘の构筑に道が拓かれます。
今回、九州大学大学院工学研究院の武石直树准教授は、関西大学システム理工学部の関眞佐子教授および西山朋宏大学院生、产総研技术移転ベンチャー公司((株)大菜技研)の菜嶋健司博士らと共同し、実験计测と数値シミュレーションの相补的なアプローチによって、ヒト血液の见かけの粘度から赤血球の変形能(膜せん断弾性率*4)を推定することに成功しました。さらに、构筑した手法は、鎌状赤血球症*5などに见られる硬化赤血球の膜せん断弾性率の推定にも有効であることがわかりました。
本成果により、血液をはじめとする粒子悬浊液のマクロレオロジー特性からミクロ构成要素の変形能の推定が可能であることが示されました。本手法论は、细胞レベルの新しい血液検査技术や、赤血球の変形能と関わる血中タンパク质量の推定技术に応用されることが期待されます。
本研究成果は、米国物理学協会AIPが発行する雑誌「Journal of Rheology」に2024年9月24日(現地時間)に掲載されました。また、本雑誌のFeatured Article (Journal’s Best)に選出されただけでなく、AIPが発行する全体の論文の中で最も顕著な研究成果のみを特集するScilight (Science Highlight)にも選出されました。
研究者からひとこと
実験计测と数値シミュレーションの相补的アプローチによる赤血球膜の物性推定
本研究は、血液のマクロレオロジー特性からミクロレベルの赤血球の膜物性を推定することに成功した初めての例です。今后は、実际の血流と同じ、非定常な流れ场における血液の流动特性や细胞の物性を推定する手法论の确立を目指します。
用语解説
(※1) 見かけの粘度
粒子が悬浊した溶液全体の粘度を粒子悬浊前の元の溶液の粘度で除した値のこと。见かけの粘度がせん断速度(ずり速度)に対して一定となる液体はニュートン流体、一定ではない液体は非ニュートン流体という。血液(または赤血球悬浊液)は、ずり速度の増加に伴い见かけの粘度が低下するずり流动化现象を示す。つまり、血液は非ニュートン流体である。
(※2) レオロジー
物质の流动と変形に関する学问分野のこと。ギリシャ语で流れるという意味の谤丑别辞と、科学を意味する濒辞驳辞蝉を组み合わせて名付けられた。マクロレオロジー特性とは、血液のずり流动化など、非ニュートン性を特徴づける系全体の流动特性のことを言う。
(※3) 懸濁液
液体中に直径100 nm程度以上の固体粒子が分散した系のことを言い、サスペンションとも呼ばれる。
(※4) 膜せん断弾性率
せん断応力に対する膜(シート)状の固体の変形のしにくさ(抵抗)を决める物性値。
(※5) 鎌状赤血球症
异常ヘモグロビン症とも呼ばれ、特にアフリカ系の人々に発生する慢性溶血性贫血。ヘモグロビン厂遗伝子がホモ接合性に遗伝することによって生じる。鎌状の赤血球は血管の闭塞を引き起こし、溶血を起こしやすいことから、重度の疼痛発作、臓器虚血、および他の全身性合併症に繋がる。
论文情报
掲載誌:Journal of Rheology
タイトル:Numerical-experimental estimation of the deformability of human red blood cells from rheometrical data
著者名:Naoki Takeishi; Tomohiro Nishiyama; Kodai Nagaishi; Takeshi Nashima; Masako Sugihara-Seki
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Scilight 記事
タイトル:Key blood disease indicator can be estimated with rheological blood test data
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