Research Results 研究成果
ポイント
概要
ひまわり头部や松ぼっくりなどに见られる2重らせんのパターンの数理モデルを与えることが知られる黄金角の方法※1は、19世纪に植物の形态モデリングの方法として提案されて以来、様々な回転体上の点群※2?メッシュ※3の生成法に用いられています。この植物にみられる现象から得られた黄金角の方法を一般化し、様々な対象に使えるようにすることは、数理科学およびサイエンスにまたがる问题として解决が要望されていました。
本学の研究でこの一般化がなされ、2次元の一般曲面、3次元以上のユークリッド空间を含む高次元构造に适用可能な点群?メッシュ生成法として、大幅にアップデートされました。
本研究は九州大学マス?フォア?インダストリ研究所の富安 亮子教授の研究に、九州大学のSENTAN-Qプログラムの支援で、数理学府博士課程のS. E. Graiff Zurita氏がリサーチ?アシスタントとして参加し、ともに実施したものです。格子をこれまで用いられていたもの※4から、数の几何(数论)のマルコフ理论※5で最适とされる、より无理数性の高い黄金格子※6に置き换えると、黄金角の方法で得られていたパッキング密度※7?π?(2√5) ≒ 0.702の値を保ったまま、一般曲面に適用できることを発見しました。新規手法が一般曲面に適用できることの証明には、準線形双曲型と呼ばれる偏微分方程式の一般論が、高次元化には、マルコフ理論の高次元版である「斉次線形式の積※8」および微分几何の「対角化可能计量※9」に関わる知见が用いられました。
今回の発见により、数论の新しい応用として得られた点群?メッシュ生成法は、性能と自由度が理论的に保証されるため、科学计算技术の改善に役立つことが期待されます。
本研究成果は米国の雑誌「Constructive Approximation」に2024年9月30日(月)(米国時間)に掲載されました。
研究者からひとこと
「数学の応用には时间がかかる」と考える研究者は多いですが、19世纪に始まった数の几何のマルコフ理论と直交曲线座标に関する纯粋数学の研究を结びつけた新规応用を与えることができました。今后も数学の応用の突破口になる社会実装を进める所存ですが、数学が难しくなりすぎないうちに早めにプレスリリースすることにいたしました。
用语解説
(※1) 黄金角の方法
円周率2πを1 : (1+√5)?2(黄金比)に分割して得られる小さい方の角度。すなわち、 φ=4π?(3+√5) ≒137.5度が黄金角。黄金角ずつ回転させながら、単位面積当たりの点の数が一定となるよう(※8も参照)回転中心からの距離を調整して点群を配置する方法を黄金角の方法という。例えば、円盤の面積が点数nに比例するように取る場合、円盤の半径は√n に比例するので、円盤状に点群を生成するフォーゲル螺旋の式は(√n cos?φ,√n sin?φ) となる。
(※2) 点群
空间中の座标点の集合は。3次元の物体の形态を表す近似的な表现法として利用される。例えば3顿スキャナなどを用いて点群の情报が取得される。
(※3) メッシュ生成
多角形?多面体を用いて曲面?3次元物体を近似的に表现すること。现象を表す数理モデル(偏微分方程式)を离散化し数値计算を行うために用いられる。メッシュの品质は、数値计算の精度や计算时间に影响する。
(※4) 黄金角の方法で主に用いられてきた2次元格子
2次元格子とは、ある実数a,b,c,d に対し、(n1a+n2b, n1c+n2d) (n1, n2 : 整数)の形に表される無限個の座標点からなる点群で、すべての点がある直線上に載らないものを指す。黄金角の方法で得られる点群は、2次元格子をある写像で写したものとみなすことが可能だが、(n1+n2 (3-√5) ? 2, n2d) の形の格子が最も多く用いられる。 d≠0の値に関わらず、適当な写像を取れば、同じような2重らせん模様が得られる。
(※5) 2変数不定値2次形式、マルコフ理論
2次式 f(x1 ,x2)=(ax1+bx2)(cx1+dx2) :(a,b,c,d 実数)のこと。マルコフ理論は、(x1, x2) が原点を除く整数値を動いたときに大きな最小値をとるf(x1,x2) に関する詳細なリストを与える。
(※6) 黄金格子
(※5)に述べた问题(尘补虫-尘颈苍问题)の解として、ある蹿(虫1, x2) がどの程度良いものであるかの指標となる目的関数の値は、(※7)のパッキング密度に対応し、連分数展開を用いて計算できる。最も良い値を取るf(x1, x2)=(x1+x2(1+√5) ? 2)(x11+x12 (1-√5) ? 2) は、黄金格子(n1+n2 (1+√5) ? 2, n2 (1-√5)?2 に対応する。
(※7) パッキング密 度
点群が均一に分布していることの指标を与える0--1の范囲の数値。点群中の最も近い2点の距离を直径とする円?球が全体の中で占める体积の割合に等しく、1に近いほど均一性が高い。
(※8) 斉次線形式の積
斉次線形式 ai1 x1+?+ain xn ( ain: 実数)の積 ∏ni=1(ai1 x1+?+ain xn ) のこと。(※5)の2変数不定値2次形式は、n=2の場合にあたる。
(※9) 多様体の対角化可能計量
この场合の「多様体」は、ユークリッド空间搁n の一部を切り取り、张り合わせることで得られる几何学的な构造で、さらに计量(距离)が定义されているものを指す。そのような多様体が対角化可能计量を持つとは、搁nのように、互いに垂直な 個の軸からなる座標系を取れることにあたる。
论文情报
掲載誌:Constructive Approximation
タイトル:Packing theory derived from phyllotaxis and products of linear forms
著者名:S. E. Graiff Zurita & R. Oishi-Tomiyasu
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