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Research Results 研究成果

ゲノム解析から探る「幻の怪鱼」アカメの进化と生存の歴史

农学研究院
叁品 达平 助教
2024.09.24
研究成果Life & HealthEnvironment & Sustainability

ポイント

  • 絶灭が危惧される大型鱼类であるアカメの全ゲノムを决定し、その遗伝的多様性と进化について分析しました。
  • アカメの种内の多様性はきわめて低く、また约30,000年もの间、个体数が少なく保たれていたことがわかりました。
  • ゲノム全体では変异が少ない一方、免疫などに関わる一部の遗伝子では遗伝的多様性が高く保たれており、病原体に対する抵抗性など、生存にとって重要な性质が维持されていると推测されました。
  • アカメゲノムの解析から、アカメが厳しい状况の中を生き残ってきた歴史が遗伝子レベルで明らかになり、早急な保全対策が必要であることが示されました。

概要

アカメ(幼鱼)(撮影:水产大学校 高桥洋博士)

 アカメは、南日本の太平洋側、おもに宮崎県?高知県の沿岸(図1)に分布する日本固有の大型の肉食魚です。人の生活圏に近い场所に生息するにも関わらず、大型個体を目にする機会はまれであることから、釣り人などからは『幻の怪魚』と呼ばれています。近年、アカメの生息に適した環境は減少しており、絶滅が心配されています。私たちは、アカメの遺伝的多様性(用语1)を把握し、保全に必要な情报を得るため、宫崎?高知各1个体ずつのアカメの全ゲノムを决定し、详しい分析を行いました。
 アカメゲノム全体の遗伝的多様性は鱼类では最低レベルで、絶灭危惧种であるトキやゴリラに近い値でした(図2)。また、アカメの有効集団サイズ(用语2)は约30,000年前から现在に近い时期まで、およそ1,000个体前后のきわめて低い値で推移していることがわかりました(図3)。
 一方で、アカメゲノムの详しい解析から、主に免疫系に関わる遗伝子が存在する复数のゲノム领域で遗伝的多様性が高く保たれていることがわかりました。このことは、病原体に対する抵抗性を维持する上で必要な遗伝的変异が、平衡选択(用语3)によって维持されてきたことを示しています。
 さらに、アカメと同属の近縁种で热帯域に生息するバラマンディ(用语4)との间で、遗伝子に生じた変异を比较したところ、多くのアカメの遗伝子に正の选択(用语5)が検出されました。これらの遗伝子の特徴や同属他种の分布域などから、热帯域に生息していた祖先种からアカメが分岐した后、アカメのみが温帯域へ适応进化したことに関係していると考えられます。
 これらの结果は、アカメでは长期にわたって少ない个体数で存続してきたことにより遗伝的多様性が低下した一方、生存にとって重要な変异は维持されていることを示しており、アカメが温帯域で独自の进化を遂げ、细々と生き残ってきた歴史を反映しているといえます。
 本研究内容は、米国分子?進化生物学会(SMBE)が発行するGenome Biology and Evolution誌の2024年8月号にオンラインで掲載されました。

図1:アカメは南日本の太平洋沿岸?おもに宮崎?高知の 沿岸に生息する

図2: アカメと他の生物との遺伝的多様性の比較

図3:过去から现在に近い时期までの、アカメとバラマンディの有効集団サイズの変化

研究者のコメント

 私たちの研究により、ゲノム解析を通じて、アカメの进化史の一端を知ることができました。また免疫系の遗伝子など、多様性が个体の生存にとって重要な遗伝子は一定の変异を保っているものの、アカメの有効集団サイズはきわめて小さいため、多くの有害変异がゲノムに蓄积している可能性があります。アカメの稚鱼の生育に适した环境である河口のアマモ场は高知?宫崎ともに减少しており、アカメの存続は予断を许さない状况です。したがって、その生息环境とともに保全を着実に进めていくことが重要です。

用语解説

1. 遺伝的多様性:生物の種内に多様な遺伝子のタイプが存在すること。遺伝的多様性が低い生物は、環境が変化した際に、その環境に適応したタイプの遺伝子を持つ可能性が低いため、絶滅しやすい。

2. 有効集団サイズ:遺伝的に均質な生物個体の集まり(集団)において、実際に繁殖に関わる個体数を一般化したもの。

3. 平衡選択:複数の異なる対立遺伝子(アレル)が集団内に維持されるようにはたらく選択。

4. バラマンディ:アカメと同属の大型肉食魚で、東南アジアからオーストラリア北部の熱帯域の沿岸に広く分布する。以前は、アカメはバラマンディと同種とされていたが、1984年に別種とされた。

5. 正の選択:新しく生じた変異が有利になるような選択。近い過去に正の選択により集団に広まった形質に関わる遺伝子には、正の選択の痕跡が検出される。

论文情报

論文タイトル:Draft genome of akame (Lates japonicus) reveals possible genetic mechanisms for long-term persistence and adaptive evolution with low genetic diversity.

著者:Yasuyuki Hashiguchi, Tappei Mishina, Hirohiko Takeshima, Kouji Nakayama, Hideaki Tanoue, Naohiko Takeshita, Hiroshi Takahashi
桥口康之 大阪医科薬科大学 医学部 生物学教室
三品達平 九州大学大学院农学研究院、 理化学研究所生命機能科学研究センター
武岛弘彦 福井県里山里海湖研究所
中山耕至 京都大学大学院农学研究科
田上英明 水产庁
竹下直彦 水产研究?教育机构水产大学校
髙橋  洋 水産研究?教育機構水産大学校

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