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Research Results 研究成果

放牧饲育における母牛-仔牛の肠内细菌の伝播と因果构造

仔牛の肠内细菌丛の机能的自立に与える环境诸要因の计算科学的理解
农学研究院
髙橋 秀之 准教授
2024.08.29
研究成果Technology

ポイント

  • 母子间の肠内细菌丛の関係性はこれまで闭锁系の研究が中心であるが、畜产経営においては开放系の放牧饲育环境条件下の评価系における知见が必要です。
  • 放牧饲育管理条件において、母牛の肠内细菌群は、离乳前の仔牛よりも离乳后の仔牛の肠内细菌丛の构造に强く影响を与えうる可能性が示されました。
  • 母牛-仔牛の肠内细菌丛の因果构造は、肠内の短锁脂肪酸の产生にも影响を与えることが示されました。

概要

 九州大学大学院农学研究院の田口佑充大学院生(研究当時)、山野晴樹大学院生、髙橋秀之准教授らは、理化学研究所環境資源科学研究センターの黒谷篤之研究員(研究当時、現 農業?食品産業技術総合研究機構(農研機構)農業情報研究センター 上級研究員)、菊地淳チームリーダー、理化学研究所生命医科学研究センターの宮本浩邦客員主管研究員、大野博司チームリーダーとの産学共同研究(千葉大発ベンチャー(株)サーマス?京葉ガスエナジーソリューション(株))によって、放牧飼育管理下の黒毛和種仔牛の母子の腸内細菌群の因果構造を計算科学的手法によって評価し、将来の飼養管理のヒントを見出すことに成功しました。
 母子の腸内細菌叢の関係性を評価する取り組みは、世界的に進められており、妊娠期における母牛の腸内細菌叢が、胎児の脳神経系や免疫系の発達に影響を与えること、出生後の疾病や肥満のリスクにも影響を及ぼすことが明らかになってきています。したがって、畜産経営においても、飼育管理上、母親の腸内細菌叢が重要であることが想定されていました。しかしながら、従来のモデル動物を用いた研究成果は、閉鎖系の飼育条件下で、かつ遺伝的に同系統の母子間を対象とした研究成果が中心であり、開放系の飼育管理下において遺伝的背景が異なる母子が共存する、通常の現場における影響は不明でした。そこで本研究では、異なる遺伝的背景を有する黒毛和種を用いて、放牧飼育管理条件下における母子間の腸内細菌叢の関係性を機械学習、因子分析、並びに因果推論(※1)によって詳細に評価しました。その結果、離乳前の仔牛よりも、むしろ離乳後の仔牛の糞中細菌叢が母牛の糞中細菌叢と強い関係性を有していました。また、糞中細菌群の中でも、フィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium)とビィフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)が、仔牛の生産性?健全性に寄与する有機酸である短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)の増加に対して効果的であるとともに、離乳すること自体が重要であることが計算上、示されました。さらに、離乳期間における好熱菌プロバイオティクス(Caldibacillus hisashii, 国際寄託番号BP-863)の投与は、相乗的なプラスの効果がある可能性も併せて示されました。
 以上の研究成果は、言い换えれば、一般的に肠内细菌丛が不安定な离乳前よりも、离乳后の方が母牛の肠内细菌丛の影响が顕在化しやすく、さらに健全な仔牛の育成のために、母牛の肠内细菌丛の管理と离乳期间における适切なプロバイオティクスの投与の双方が重要である可能性を指摘しています。今后、放牧牛のみならず、畜产経営全般に関わる効率的な饲育管理手法、并びに母子の肠内细菌丛の関係性の理解につながることが期待されます。
 本研究成果は、計算科学で著名なノルウェーのResearch networksの取り組みを基盤として、Elsevierから出版されている国際学術誌「Computational and Structural Biotechnology Reports」に2024年8月15日(木)にオンライン掲載されました。

放牧飼育管理条件下において、母牛-仔牛間の糞中細菌叢の関係性を機械学習?因子分析?因果推論によって推定することに成功しました。その結果、離乳前の仔牛よりも離乳後の仔牛の方が母牛の腸内細菌叢と強い関係性があることが計算上、示されました。さらに、離乳後の反応として、仔牛の成長促進に貢献する短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)の濃度の増加に対して、フィーカリバクテリウム属とビィフィドバクテリウム属が重要であり、離乳自体がこれらの代謝系に強く影響することが示されました。さらに、これらの代謝系に対して、離乳期における好熱菌プロバイオティクス(Caldibacillus hisashii, 国際寄託番号BP-863)の経口投与が、相乗的に働きうることが示されました。

用语解説

(※1) 機械学習、因子分析、並びに因果推論
机械学习:経験からの学习により自动で改善するコンピュータアルゴリズム。教师なし机械学习と教师あり机械学习に分类される。
因子分析: 複数の因子群から探索的に因子間の関係性を評価する計算手法。
因果推论:実験?観察データから得られた情报を基に、データ间の因果効果を统计的に推定していく方法。

论文情报

掲載誌:Computational and Structural Biotechnology Reports
タイトル:Causal estimation of maternal-offspring gut commensal bacterial associations under livestock grazing management conditions
著者名:Yutaka Taguchi, Atsushi Kurotani, Haruki Yamano, Hirokuni Miyamoto, Tamotsu Kato, Naoko Tsuji, Makiko Matsuura, Teruno Nakaguma, Tetsuji Etoh, Yuji Shiotsuka, Ryoichi Fujino, Motoaki Udagawa, Jun Kikuchi, Hiroshi Ohno, Hideyuki Takahashi
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