Research Results 研究成果
ポイント
概要
山口大学(学長:谷澤 幸生)の大学院医学系研究科産科婦人科学講座(田村 功講師、杉野 法広教授)と九州大学(総長:石橋 達朗)の大学院农学研究院繁殖生理学分野(宮本 圭教授(2024年3月まで近畿大学所属))の研究グループは、ヒト胚の着床注1に必要となる脱落膜化注2という现象が、细胞核内でのアクチン注3タンパク质の动态変化によって制御されることを世界で初めて明らかにしました。
着床とは、受精卵が子宫内膜に接着?浸润する妊娠成立のための最初のステップです。この过程では、子宫内膜で様々な変化が诱导され受精卵を受け入れることができるようになります。そのうちの一つである子宫内膜间质细胞の脱落膜化は、ホルモンの影响により细胞が机能的にも形态学的にも剧的に変化する特有の现象であり、着床や妊娠の维持に必须の现象です。脱落膜化が障害された场合は、受精卵を受け入れることができず着床不全となり不妊症となります。この脱落膜化の调节机构は未だ完全には明らかにされていません。
近年、细胞骨格の构成组织であるアクチンタンパク质は、细胞质だけではなく核内にも存在することが明らかとなってきており、その遗伝子発现注4制御への役割が着目されています。研究グループは、脱落膜化を受けるヒト細胞核内の変化を観察したところ、アクチンが重合し繊維化した特殊な構造体が出来上がることを発見しました(図1)。またこの核内アクチンの繊維化は、脱落膜化の誘導に重要な役割を持っていることを示しました。本研究によってヒトの着床に関わる新たな机构が明らかになるとともに、着床不全による不妊症患者に対する治疗法の开発に贡献することが期待されます。
本研究成果は、2024年7月11日付(ロンドン時間午前10時)で、Communications Biologyに掲載されました。
用语解説
注1. 着床
卵子と精子の受精によってできた受精卵が、子宫内の子宫内膜に接着すること。妊娠の最初のステップである。様々な原因で子宫内膜の机能が障害されると着床不全となり不妊症の一因となる。
注2. 脱落膜化
子宫内膜は主に上皮细胞と间质细胞により构成されるが、间质细胞は着床期に向けて脱落膜化という细胞の形态的?机能的分化を遂げる。この过程は妊娠の成立?维持に必须な现象であり、脱落膜化の障害は着床不全の原因となる。脱落膜化过程では着床现象に必要な多くの遗伝子発现変化と细胞机能変化が诱导される。
注3. アクチン
细胞骨格の构成因子であり、これまでは、细胞质のみに存在すると考えられていた。しかし、近年の研究によりアクチンは核内にも存在することが分かってきた。さらに、アクチンは単量体または、それらの重合体の状态で存在しており、遗伝子発现制御を含めた核内の様々なイベントに関わっていると考えられている。
注4. 遺伝子発現
细胞核内にはゲノム顿狈础があり、搁狈础へと転写され、最终的に搁狈础からタンパク质がつくられる。この一连の流れを遗伝子発现とよび、私たちが生命活动を行うために必须の现象である。
论文情报
掲載誌:Communications Biology
タイトル:Nuclear actin assembly is an integral part of decidualization in human endometrial stromal cells
著者名: Isao Tamura, Kei Miyamoto, Chiharu Hatanaka, Amon Shiroshita, Taishi Fujimura, Yuichiro Shirafuta, Yumiko Mihara, Ryo Maekawa, Toshiaki Taketani, Shun Sato, Kazuya Matsumoto, Hiroshi Tamura, Norihiro Sugino
田村 功(责任着者)、宫本圭(共第一着者、责任着者)、畑中千春、城下亜文、藤村大志、白盖雄一郎、叁原由実子、前川亮、竹谷俊明、佐藤 俊、松本和也、田村博史、杉野法広
DOI :
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