Research Results 研究成果
ポイント
概要
宇宙空间を飞び交う放射线(宇宙线)は1912年に発见されました。地上の加速器では到底実现できないような高いエネルギーをもちますが、その生成机构は発见以来谜のままです。
九州大学大学院総合理工学研究院の松清修一教授と千叶大学国际高等研究基干の松本洋介准教授は、太阳圏の外縁で生成されることが知られている宇宙线异常成分(この领域で生成される宇宙线を特别にこのように呼びます)の加速过程を调査しました。太阳圏とは、宇宙空间において太阳を起源とするプラズマが占める领域のことで、最低でも数百亿キロメートル以上にわたって広がっているとされています。过去に唯一、太阳圏外縁の直接探査に成功したボイジャー探査机(※3)はたしかに宇宙线异常成分を観测したものの、その生成率が探査当时の理论的予测と明らかに异なるなど、宇宙线生成机构の谜は深まっていました。研究グループが注目したのは外縁领域に存在する衝撃波での粒子加速で、加速のトリガーとなる初期の加速机构がどのように発现するのかという点です。スーパーコンピュータ「富岳」(※4)を使って宇宙プラズマ衝撃波の大规模かつ高精度な第一原理计算を行い、宇宙線異常成分の種になる陽子の初期加速過程を世界で初めて解き明かしました。
宇宙线には远く离れた高エネルギー天体现象の情报を我々に伝えるメッセンジャーとしてのはたらきがあるほか、银河や生命の进化にも影响を与えると考えられており、その生成机构の解明は自然科学のさまざまな分野の研究を促进することが期待されます。
本研究成果は米国の雑誌The Astrophysical Journal Lettersに2024年7月29日(月)午後5時(日本時間)に掲載されました。
研究者からひとこと
宇宙线异常成分の加速には复数のモデルがあり、目下数値计算による検証が盛んです。ここでは従来よりも格段に精度の高い第一原理计算を用いて衝撃波による加速过程を详细に调べました。计算コストのかかる第一原理计算で阳子の初期加速を再现することに世界で初めて成功したのは、「富岳」の高い计算能力のおかげです。
左上)太陽圏の模式図。この図の赤枠の領域(終端衝撃波とその近傍)を第一原理計算で再現。 左下)計算で再現した衝撃波近傍のようす。上は陽子の密度、下は磁場構造を表す。 右上)内部ヘリオシースの陽子のエネルギー分布。図中の角度は衝撃波面に対する磁力線の向きを表す。 右下)代表的な被加速粒子の軌道とエネルギーの変化。左右の線の同じ色が同じ時刻に相当する。
用语解説
(※1) 宇宙線
宇宙空间を飞び交う高エネルギーの粒子?放射线の総称で、宇宙放射线とも呼ばれる。
(※2) 第一原理計算
膨大な数(数百亿个)の电子と阳子の运动方程式と、マックスウェル方程式(电磁场の基础方程式)を连立して解くプラズマの数値计算法。(无衝突)プラズマ物理学の第一原理に忠実で计算精度の高い方法だが、电子スケールのミクロな构造を解く解像度が必要なため阳子が関係する现象を扱うには大规模计算が不可欠である。
(※3) ボイジャー探査機
1977年に打ち上げられた米国の宇宙探査机で现在は太阳圏外の星间空间を航行中。2004年(1号机)と2007年(2号机)に太阳圏终端衝撃波を通过して贵重なデータを取得した。
(※4) スーパーコンピュータ「富岳」
スーパーコンピュータ「京」の后継机として理化学研究所が设置し、2021年3月から共用を开始した计算机。2020年6月以降、世界のスーパーコンピュータに関するランキングにおいて、4部门で4期连続1位、うち2部门で9期连続1位を获得するなど、世界トップレベルの性能を持つ。
论文情报
掲載誌:The Astrophysical Journal Letters
タイトル:Injection process of pickup ion acceleration at an oblique heliospheric termination shock
著者名:Shuichi Matsukiyo and Yosuke Matsumoto
顿翱滨:10.3847/2041-8213/补诲5诲73
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