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Research Results 研究成果

冬季西日本における极端降水量の数年先までの潜在的予测可能性を実証

异常天候の中长期的な予测の実现に繋がると期待
理学研究院
望月 崇 准教授
2024.06.06
研究成果Environment & Sustainability

ポイント

  • 数年程度の気候変动予测は、気候変动に対する施策决定の基盘となる予测情报を提供します。大気海洋结合モデル(※1)を用いた膨大な予测计算では、グローバルな気候変动の予测情报を得られる一方で、极端な気象现象やそれに伴う局所的な降水量の変动の予测情报を直接得ることは困难です。
  • 本研究では、精度良く予测情报を得ることができるグローバルな気候変动を大気海洋结合モデルによる気候変动予测データセットから特定するとともに、その気候変动に付随して起こりうる极端降水量の変动を、高い空间解像度をもつ大気モデル(※2)による过去再现データセットから确率论的に同定しました。これにより、冬季の东アジアとりわけ西日本地方で起こりうる极端降水量について、数年先までの潜在的な予测可能性を実証することに成功しました。
  • 本研究の成果は、异常天候や极端な気象现象の强度について中长期的な予测の実现に繋がることが期待されます。

概要

 数年程度の気候変动予测は、気候変动に対する施策决定の基盘となる予测情报を提供します。大気海洋结合モデルを用いた気候変动予测では、膨大な数値计算(数値シミュレーション)からグローバルな気候変动の予测情报が得られます。一方、同様の手法で极端な気象现象に伴う局所的な降水量の変动の予测情报を直接的に得ようとした场合には、より高い空间解像度をもつ大気海洋结合モデルを用いた多数のアンサンブル计算(※3)が必要であり、计算量の着しい増加を伴うことから现时点では実施が困难です。
 九州大学大学院理学研究院の望月崇 准教授は、計算量の著しい増加を伴う直接的な予測計算に代えて、大気海洋結合モデルによる気候変動予測データセットと高い空間解像度をもつ大気モデルによる過去再現アンサンブル計算データセットを併用して、極端な気象現象に伴う局所的な降水量の予測情報を得ることに成功しました。とりわけ1961年以降の西日本地方に対する検証では、日別降水量においてひと冬あたり上位1%にあたる極端な降水量の数年ごとの多寡が、大気海洋結合モデルで精度良く予測可能なグローバル気候変動成分である“海盆間変動”(Trans-Basin Variability)(※4)の動向に強く追随することがわかり、3年先までの起こりうる極端な降水量の多寡に潜在的な予測可能性が実証されました。
 本研究成果は、将来の気候変动予测、とりわけ异常天候や极端な気象现象の强度について中长期的な予测の実现に繋がることが期待されます。
 本研究成果は、米国地球物理学連合(American Geophysical Union)の国際科学誌「Geophysical Research Letters」に2024年6月1日(土)(日本時間)に掲載されました。

(a) 予測開始時刻から3年先までの予測データと観測データが同期する(予測できる)グローバル気候変動成分である“海盆間変動”の時系列。(b) “海盆間変動”の時系列に対して、各冬季の日別降水量上位1%にあたる極端降水量の相関図(統計的に99%, 95%, 90%有意な地域に着色)。

用语解説

(※1) 大気海洋結合モデル
大気と海洋の状态を同时に推定する数値モデルです。物理方程式に基づいて大気と海洋の変动を数値的に解きながら、计算される热や物质、运动量の情报を矛盾なく交换して相互の数値计算に反映させていき、一つの结合システムとして状态推定をおこないます。本研究で使用した数年规模の気候変动予测データセットは、惭滨搁翱颁5とよばれる大気海洋结合モデルに基づきます。

(※2) 大気モデル
大気の状态を推定する数値モデルです。海水温や海流の计算はおこなわないため、何らかのデータを境界条件として入力しながら状态推定をおこないます。本研究で使用した诲4笔顿贵データセットには、过去の観测データに基づく海面水温データを入力した计算结果が収録されています。

(※3) アンサンブル計算
大気と海洋の変动は非线形性が强いため、予测计算をおこなうときの初期状态のわずかな违いや境界条件のわずかな违いが计算结果に大きな违いをもたらします。そのような不确実さを推定するための有効な手段のひとつとして、初期状态や境界条件をわずかに変化させて多数の计算が実施されます。アンサンブル计算の结果は确率论的な考察を可能にするため、极端な気象现象のように発生频度が低い现象の特徴も捉えられるようになります。

(※4) 海盆間変動(Trans-Basin Variability)
主に热帯域の太平洋と大西洋の海面気圧や海面水温が数年规模でシーソーのように変动する现象です。インド洋から西太平洋の一部における海面気圧も概ね大西洋に同期します(図1)。

论文情报

掲載誌:Geophysical Research Letters
タイトル:
著者名:Takashi Mochizuki
顿翱滨:10.1029/2024骋尝108312

お问い合わせ

理学研究院 准教授