Research Results 研究成果
ポイント
概要
多くの生物にとって呼吸は最も重要な生命活动の一つであり、呼吸戦略の研究はその生物のより深い理解に繋がります。ヤドリバエとよばれるハエの仲间はその名の通り他の昆虫の体内に宿る、すなわち内部寄生性を示すグループです。生物の体内は気体の酸素にアクセスするのが难しい环境のため、ヤドリバエのような内部寄生者にとって呼吸法の确立は寄生の成功を左右する重要な问题です。ヤドリバエの幼虫は「呼吸漏斗(ファネル)」と呼ばれる构造体によって外気を取り入れることが知られており、一部のヤドリバエの仲间がもつ幼虫の体を覆う鞘型の呼吸漏斗はホストの免疫作用を利用して作られることが知られていました。
今回、九州大学大学院?地球社会統合科学府の駒形森さん、九州大学大学院?比较社会文化研究院の小川浩太助教 、舘卓司准教授らのグループは、カメムシに寄生するヤドリバエの幼虫が自らのフンを利用し、既知のメカニズムとは異なる独自の方法で呼吸漏斗を形成していることを突き止めました。本研究ではまずカメムシに寄生するマルボシヒラタヤドリバエの飼育実験系を立ち上げ、呼吸漏斗の形成過程を様々な組織形態学的解析手法を用いて多角的に解析しました。その結果、このハエの幼虫は、1)寄主の体内で1本につながったフンを排泄し、それを体に巻きつけていくことでコーン型の呼吸漏斗を形成していること、2)幼虫の肛門付近にはフンを固めてちぎれないようにするためと思われる分泌腺の存在が明らかとなりました。さらに、他のヤドリバエの呼吸漏斗も解析し、この“フン製シュノーケル”がカメムシに寄生するヤドリバエの仲間を中心にある程度広く見られるものであることが分かりました。
ヤドリバエの呼吸様式に関する研究がさらに进めば、ハエ类が寄生性を获得するに至った进化的な経纬をより详しく考察することができると期待されます。また、农业害虫であるカメムシに寄生するヤドリバエの生态解明は、ヤドリバエを防御资材として利用するための第一歩とも言えます。
本研究成果は、2024年4月17日付(日本時間)でイギリスの国際誌 Bulletin of entomological researchに発表されました。
ヤドリバエの一種 マルボシヒラタヤドリバエ Gymnosoma rotundata
カメムシに产卵されたヤドリバエの卵
寄生されたカメムシの颁罢画像
マルボシヒラタヤドリバエの幼虫と呼吸漏斗(ファネル)
呼吸漏斗形成前のヤドリバエ幼虫。1本に繋がったフンが确认できる
共焦点レーザー顕微鏡による呼吸漏斗の形態解析。a, bそれぞれは左図の拡大。矢頭(白)は寄主の気管との結合部分、矢頭(黒)は固まったフンが形成する層状の構造。幼虫が小さいころに形成される部位(a)に比べ、大きく成長してから形成される部分(b)では層構造の厚みが増している。これは幼虫の成長に伴い排泄されるフンが太くなっていくためである。
论文情报
掲載誌:Bulletin of Entomological Research. 2024 Apr 17:1-9. (Online ahead of print.)
タイトル:The bug-killer fly Gymnosoma rotundatum (L.) (Diptera: Tachinidae) forms the respiratory funnel independently of the host’s immune response
著者名:Shin Komagata, Kota Ogawa, Takuji Tachi
顿翱滨:丑迟迟辫蝉://诲辞颈.辞谤驳/10.1017/厂0007485324000221
研究に関するお问合せ先