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Research Results 研究成果

シベリア森林火灾の大気质?気候?経済への包括的な影响を现在及び近未来気候条件の感度実験から初めて评価

森林火灾による大気エアロゾルは気候、人の健康から経済にまで影响を与える
応用力学研究所
竹村 俊彦 主干教授
2024.04.25
研究成果Environment & Sustainability

ポイント

  • シベリア森林火灾が増加すると火灾発生源及び风下地域で冷却効果と大気质悪化をもたらす。
  • 近未来の気候下で、これら地域で火灾の大気エアロゾル冷却効果が温暖化を抑制する可能性を示唆。
  • 森林火灾の大気汚染微粒子は、笔惭2.5环境基準の达成率低下、早期死亡数増加、経済损失と密接に関连。

概要

 北海道大学北极域研究センター(広域复合灾害研究センター兼务)の安成哲平准教授?ディスティングイッシュトリサーチャー、东京大学大学院総合文化研究科の成田大树教授、九州大学応用力学研究所の竹村俊彦主干教授、北海道大学大学院工学院修士课程の若林成人氏(研究当时)、千叶大学环境リモートセンシング研究センター(东京大学生产技术研究所兼务)の竹岛滉特任研究员による研究グループは、シベリア森林火灾が気候、大気质、経済に与える影响について、惭滨搁翱颁5気候モデルを用いて感度実験*1による现在及び近未来(2030年)の気候条件下*2で森林火灾増加を仮定した全球感度数値シミュレーションを行い、その解析から包括的な评価を初めて行いました。
 シベリア森林火灾の强度が强まり大気エアロゾルが増加した场合には、火灾発生域から风下域で広范囲の冷却効果をもたらし、将来の温暖化时にはこれらの地域で温暖化を抑制するような効果も见られました。また、このシベリア森林火灾强化による大気汚染増加は、あくまで数値モデルの感度実験としての影响规模の见积もりですが、中国や日本など东アジアの国々では、笔惭2.5増加により年间约数万人规模の早期死亡数増加が推定され、これらの経済的损失は货币换算するとそれぞれ约数百亿米ドルにも上ることが分かりました。これは、シベリア森林火灾の强度が弱かった2004年と比べ特に强かった2003年のさらに2倍の强度で起こった场合(いわゆる极端现象想定)の推定値です。また、现在の気候条件下では、シベリア森林火灾による冷却効果が日本などの低纬度の国々に経済的利益を、ロシアなどの高纬度の国々には损失をもたらす可能性がある一方で、2030年の近未来の気候では、森林火灾と温室効果ガスの影响が组み合わさり、低纬度では损失、高纬度では利益が生じる可能性も示唆されました。このことは、シベリア森林火灾の烟が、地域に限らず、越境大気汚染として风下域など远方にも広がりを见せ、広い范囲で人々の健康と経済に深刻な影响を及ぼしうる可能性と、森林火灾はその影响も含め、発生地域のみならず地球规模での対策が必要であることを意味します。本研究は、现在温暖化が进行する中で、今后、森林火灾から排出される大気汚染微粒子(エアロゾルや笔惭2.5)*3による気候?健康?経済への様々な影响について适応策を讲じるための重要な基盘となるデータを提供します。
 大陸のシベリアのタイガ森林帯で大規模森林火災が発生して、煙と共に大気汚染微粒子(エアロゾル)が大量に大気中へ排出され、太陽光を反射している様子の概念図(Open AIのDALLEをGPT-4で使用して作成)。
 なお、本研究成果は、日本時間2024年4月24日(水)公開のEarth’s Future誌に掲載されました。

大陸のシベリアのタイガ森林帯で大規模森林火災が発生して、煙と共に大気汚染微粒子(エアロゾル)が大量に大気中へ排出され、太陽光を反射している様子の概念図(Open AIのDALL?EをGPT-4で使用して作成)

用语解説

*1 感度実験 … ある事象の影響を見るために、その対象とするものを変化させることで、その影響を分析し理解しようとする実験。本研究では、気候モデルの全球数値シミュレーションにおいて、定義されたシベリア域の森林火災による大気汚染排出量を現在と近未来の気候下で変化させ、その対象実験と基準実験の比較を行うことで、シベリア森林火災が増加した場合の影響を議論している。

*2 現在及び近未来(2030年)の気候条件下 … 本研究では、シベリアの森林火災による大気汚染(大気エアロゾル)の影響評価を現在と近未来の気候条件下で分析するため、IPCC第5次評価報告書でも使用されているRCP(代表濃度経路シナリオ:Moss et al.,(2010,doi:10.1038/nature08823)による温室効果ガス濃度で温暖化度合い(気候条件)を設定した。論文では現在気候は、2005年のRCP、近未来は経済的な観点からも関心の高いパリ協定が終了する(目標が設定されている)2030年()を选定し、最も低排出量のシナリオである搁颁笔2.6と最も高排出量のシナリオである搁颁笔8.5を设定した。

*3 大気汚染微粒子 … 大気エアロゾルやガスなどを大量に含む大気環境の状況の総称として、大気汚染と一般的に呼ぶが、その中で大気エアロゾル(大気中に浮遊する微粒子の総称)は、2.5μm以下のサイズに注目した場合には、健康影響の観点から指標として使われるPM2.5と呼ばれる。本研究では、森林火災から排出された大気汚染のうち大気エアロゾル(微粒子)(化学反応を通じてエアロゾルになる前段階のガス状の物質「前駆物質」も本研究では考慮)に注目し、さらにそのPM2.5にも注目することで健康影響評価について分析を行なっている()。

论文情报

論文名 Comprehensive Impact of Changing Siberian Wildfire Severities on Air Quality, Climate, and Economy: MIROC5 Global Climate Model's Sensitivity Assessments(シベリアの森林火災の深刻化が大気質、気候、経済に与える広範な影響:MIROC5全球気候モデルによる感度評価)

着者名 安成哲平?’?、成田大树?、竹村俊彦?、若林成人?(研究当时)、竹岛 滉?’?(?北海道大学北极域研究センター、?北海道大学広域复合灾害研究センター、?东京大学大学院総合文化研究科、?九州大学応用力学研究所、?北海道大学大学院工学院、?千叶大学环境リモートセンシング研究センター、?东京大学生产技术研究所)

雑誌名 Earth’s Future(地球環境学の学際的専門誌)

DOI 10.1029/2023贰贵004129

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