Research Results 研究成果
ポイント
概要
自闭症(※1)は「対人コミュニケーション障害」と「活动や兴味の范囲の着しい限局性」を主な特徴とする神経発达障害であり、その発症频度は総人口の约1.5%と非常に高い一方で、根本的な治疗法や正确な诊断方法などが确立されていないため、社会的にも大きな问题となっています。近年、自闭症患者を対象とした大规模な遗伝子変异探索がおこなわれた结果、颁贬顿8という遗伝子に最も多くの遗伝子変异が同定されたことから、现在颁贬顿8は自闭症の病因?病态を理解するための代表的な遗伝子として世界的に注目を集めています。しかし、これまでは自闭症の発症原因として颁贬顿8タンパク质の量的减少に着目した研究がほとんどで、颁贬顿8タンパク质の机能障害を生じる変异についての解析は行われていませんでした。そのため、どの変异がどのような分子机序で自闭症の発症に関与しているのかについてはほとんど理解が进んでおらず、自闭症発症の分子基盘は未だに不明のままです。
九州大学 中山 敬一 主幹教授、白石 大智 大学院生、金沢大学 西山 正章 教授、藤田医科大学 宮川 剛 教授、長浜バイオ大学 白井 剛 教授らの研究グループは、自閉症患者におけるCHD8遺伝子上のミスセンス変異(※2)に対して、様々な予測スコアを適用し、これらの変異が高いスコアを持つ群と低いスコアを持つ群に大別されることを見出しました。これらのうち代表的な変異について、CHD8タンパク質の活性、幹細胞の神経分化、マウスの行動にどのような影響を及ぼすかについて検証したところ、高スコア群に含まれる変異のみが自閉症の発症に寄与することを明らかにしました。さらに、高スコア群の変異の中にはこれまで予想されていなかった経路を介して自閉症の発症に関与するものも見つかったことから、CHD8遺伝子変異による自閉症の発症メカニズムは複数存在することが示唆されました。
本研究結果によってCHD8遺伝子変異による自閉症発症の分子基盤に対する理解が深まり、新たな治療法の開発が期待されるほか、本研究で確立したスコアは自閉症発症のリスク予測や診断精度の向上にも役立つと期待されます。本研究成果は英国の雑誌「Molecular Psychiatry」に2024年3月5日(火)午前10時(日本時間)に掲載されました。
高スコア群の変异は様々なメカニズムを介して自闭症の発症原因となる
用语解説
(※1) 自閉症:正式な名称としては自閉スペクトラム症や自閉症スペクトラム障害と定義されており、Autism spectrum disorderを略して「ASD」とも呼ばれます。
(※2) ミスセンス変異:あるアミノ酸が別のアミノ酸に置換される遺伝子変異で、全体のアミノ酸配列(CHD8遺伝子の場合2581アミノ酸)のうち1つにしか影響しません。
论文情报
掲載誌:Molecular Psychiatry
タイトル:
著者名:Taichi Shiraishi, Yuta Katayama, Masaaki Nishiyama, Hirotaka Shoji, Tsuyoshi Miyakawa, Taisuke Mizoo, Akinobu Matsumoto, Atsushi Hijikata, Tsuyoshi Shirai, Kouta Mayanagi, and Keiichi I. Nakayama
顿翱滨:10.1038/蝉41380-024-02491-测
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