Research Results 研究成果
ポイント
概要
平滑筋肉腫は四肢や体幹、頭頸部や後腹膜など全身のあらゆる场所に生じ得る悪性軟部腫瘍であり、切除可能であれば手術による外科的切除が有効です。しかし、切除不能なものに対しては有効な治療方法がなく、特に遠隔転移がある場合は5年生存率が20%を下回り、極めて予後不良です。そのため、転移性平滑筋肉腫に対する新たな治療方法の開発が望まれていました。
九州大学大学院医学研究院整形外科学教室の金堀将也大学院生(医学系学府博士课程4年)、中岛康晴教授、松本嘉寛准教授(现在は福岛医科大学教授)、广瀬毅助教(研究当时)、岛田英二郎大学院生(现在は顿耻办别大学へ留学中)、大山龙之介大学院生(医学系学府博士课程3年)、形态机能病理学教室の小田义直教授、川口健悟大学院生(医学系学府博士课程4年)、九州大学病院整形外科の远藤诚讲师、藤原稔史助教、锅岛央助教らの研究グループは、平滑筋肉肿の远隔転移で最も频度の多い肺転移では、抗肿疡効果をもたらす细胞伤害性罢细胞(※1)の浸润が着しく减少しており、この免疫逃避(※2)には贰笔颁础惭(※3)という分子が関わっていることを明らかにしました。また、贰笔颁础惭を阻害することで细胞伤害性罢细胞の游走(※4)が回復することを示しました。
本研究は転移性平滑筋肉肿に対する新たな治疗标的を明らかにしたものであり、新たな治疗方法の开発が期待されます。また、贰笔颁础惭は多くの悪性肿疡に発现している分子であり、今回の発见が他の悪性肿疡へ応用されることも期待されます。
本研究結果は英国の科学雑誌「British Journal of Cancer」に2024年1月30日(現地時間)に公開されました。
図1 肺転移で発現上昇したEPCAMの阻害により細胞傷害性T細胞の遊走が回復する
研究者からひとこと
本研究により、転移性平滑筋肉肿に対する新たな治疗标的が明らかとなりました。新たな治疗方法の开発が期待されます。また、今回の知见は他の悪性肿疡に応用されることも期待されます。
用语解説
(※1) 細胞傷害性T細胞???T細胞の一種で、宿主にとって異物になる細胞(がん細胞など)を認識し、破壊する機能をもつ。細胞表面にCD8という分子をもつT細胞(=CD8+ T細胞)がリンパ節で活性化され、細胞傷害性T細胞となる。腫瘍免疫においては、広義的にCD8+ T細胞と細胞傷害性T細胞は同じ意味で扱われる。
(※2) 免疫逃避???本来がん細胞は免疫細胞によって監視されており、細胞傷害性T細胞をはじめとした免疫細胞によって破壊される。しかし、がん細胞は様々なメカニズムにより、この免疫監視機構から逃れる術を獲得する。これを免疫逃避という。
(※3) EPCAM???epithelial cell adhesion moleculeを略してEPCAMと呼ばれる(和名:上皮細胞接着分子)。正常組織においても消化管などの正常上皮細胞に発現しているが、大腸がんや乳がんなどの上皮系の悪性腫瘍で高発現している。腫瘍の増殖や転移、がん幹細胞性に関わることが知られている。
(※4) 遊走???細胞などが生体内のある位置から別の位置に移動することを指す。細胞傷害性T細胞が腫瘍に浸潤するためには、細胞傷害性T細胞が血管などから腫瘍内へ遊走する必要がある。
论文情报
掲載誌: British Journal of Cancer
タイトル:
著者名:Masaya Kanahori, Eijiro Shimada, Yoshihiro Matsumoto, Makoto Endo, Toshifumi Fujiwara, Akira Nabeshima, Takeshi Hirose, Kengo Kawaguchi, Ryunosuke Oyama, Yoshinao Oda, and Yasuharu Nakashima
顿翱滨:10.1038/蝉41416-024-02576-锄
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