Research Results 研究成果
概要
理化学研究所(理研)開拓研究本部上野核分光研究室の郷慎太郎研究員、上野秀樹主任研究員、仁科加速器科学研究センター宇宙放射線研究室の米田浩基基礎科学特別研究員(研究当時)、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(WPI-Kavli IPMU)の都築豊大学院生(研究当時)、高橋忠幸教授、九州大学大学院理学研究院の市川雄一准教授、東京都市大学理工学部の西村太樹准教授らの共同研究グループは、宇宙観測技術をベースとした多層半導体コンプトンカメラ[1]を用い、原子核から放出される光(ガンマ線)の偏光[2]を捉え、原子核の内部構造を明らかにできることを示しました。
本研究成果は、希少な不安定核摆3闭における原子核の魔法数摆4闭の消失过程など、宇宙の成立や物质の性质の理解の基础的知见を深めることに寄与すると期待されます。
本研究では、原子核の内部构造を调べるため、多层半导体コンプトンカメラの光に対する高い位置决定精度と検出効率に着目しました。宇宙観测分野では、宇宙空间の全方向から飞来する光を调べます。一方、加速器を用いた地上での原子核の分光実験では、放出されるガンマ线の放射位置と强度を人工的に制御することが可能です。ガンマ线の入射方向を决めた上でその散乱事象を详细に分析できることから、高感度な偏光测定が実现できると考えました。
そこで、原子核実験と宇宙観测の研究者がタッグを组み、本装置を活用した56贵别原子核の励起状态から放出されるガンマ线の偏光测定を実施しました。その结果、偏光の测定を実証したばかりでなく、その测定の感度は非常に高く、高い検出効率を兼ね备えた革新的な手法であることが分かりました。
本研究は、科学雑誌『Scientific Reports』オンライン版(2月9日付:日本時間2月9日)に掲載されました。
多层半导体コンプトンカメラで捉えた偏光ガンマ线の散乱方位角分布
用语解説
[1] コンプトンカメラ
物质中に入ったガンマ线のうち、コンプトン散乱と呼ばれる、光が电子と衝突し、元の振动数より小さな振动数をもって散乱する现象を観测し、ガンマ线の到来方向を限定することのできる装置。复数の入射ガンマ线のイベントを解析することによって、放射线源を「撮影」することができる。
[2] 偏光
光や电磁波は电场?磁场が进行方向に対し直行しつつ振动し伝わる波である。ここでの偏光は直线偏光を指し、进行方向に対し常に同一の方向で电场と磁场が振动を繰り返す。
[3] 不安定核
阳子もしくは中性子のどちらかが安定核に比べて过剰な原子核。短寿命で放射性崩壊を起こすことによって、安定な原子核に変化する。
[4] 魔法数
原子核は殻构造を持ち、特定の阳子数?中性子数(魔法数)を満たすときに闭殻构造となり、安定化することが知られている。近年の不安定核の研究では、この魔法数が消失し、新たな魔法数によって安定化することが分かってきた。&苍产蝉辫;
论文情报
雑誌:Scientific Reports
タイトル:
著者名:S. Go, Y. Tsuzuki, H. Yoneda, Y. Ichikawa, T. Ikeda, N. Imai, K. Imamura, M.Niikura, D. Nishimura, R. Mizuno, S. Takeda, H. Ueno, S. Watanabe, T. Y. Saito,S. Shimoura, S. Sugawara, A. Takamine, and T. Takahashi
顿翱滨:10.1038/蝉41598-024-52692-2
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