Research Results 研究成果
九州大学生体防御医学研究所の藤木幸夫教授のグループは、东北大学大学院生命科学研究科情报伝达分子解析分野の阿部彰子(博士后期课程大学院生)と水野健作教授らのグループとの共同研究により、一次繊毛形成に関わるプロテインキナーゼ狈顿搁2がペルオキシソーム上に局在することを発见し、狈顿搁2のペルオキシソームへの局在化が一次繊毛形成に重要な役割を担うことを発见しました。
私たちの身体を构成する细胞の多くは、一次繊毛とよばれる1本の小さな突起构造をその表面に突出させています。その机能は长らく不明でしたが、近年、一次繊毛は、细胞外からの机械的?化学的シグナルを受容する「アンテナ」として机能していることが明らかになり、细胞の恒常性维持、増殖?分化の调节、组织?器官の形成や维持に重要な役割を担っていることが明らかにされてきました(図1础)。一次繊毛の形成异常や机能不全は、嚢胞性肾疾患?网膜変性症?认知障害?内臓逆位?肥満?多指症など様々な症状を呈する繊毛病と総称される遗伝性疾患の原因となることが最近になって明らかになりました(図1叠)。しかし、一次繊毛の形成を制御する分子机构については未解明の点が多く残されています。
私たちは、以前に狈顿搁2(エヌディーアールツー)とよばれるタンパク质リン酸化酵素が一次繊毛形成に関与することを见出しました。狈顿搁2がどのようにして一次繊毛形成を制御しているのかを详细に検讨するために、本研究では、狈顿搁2の细胞内局在に着目し、狈顿搁2がペルオキシソームとよばれる细胞内小器官上に局在することを见出しました(図2)。ペルオキシソームへの局在化については、ペルオキシンとよばれるペルオキシソーム形成タンパク质群が、脂质代谢酵素群など构成タンパク质の特定のアミノ酸配列(ペルオキシソーム局在化シグナル)を认识して结合し、ペルオキシソームへと输送することが知られています。私たちは、狈顿搁2のカルボキシル末端にあるグリシン-リシン-ロイシンという配列(図3叠)が、これまでの研究で知られているペルオキシソーム局在化シグナルと类似していることから、この配列がペルオキシンに认识されることでペルオキシソームへ输送されると予测しました。実験の结果、狈顿搁2がこのカルボキシル末端の配列に依存して、ペルオキシソームに局在化することが明らかになりました。
细胞内の狈顿搁2を欠损させた细胞では一次繊毛形成が抑制されます。この细胞に野生型の狈顿搁2遗伝子を导入すると一次繊毛形成の回復効果が见られますが、ペルオキシソーム局在化シグナルを欠いた狈顿搁2変异体を导入しても回復効果は见られませんでした(図3)。このことは、狈顿搁2がペルオキシソーム上に运ばれることが、狈顿搁2による一次繊毛形成のプロセスに必须であることを强く示唆しています。
本研究によって、ペルオキシソームは一次繊毛形成に必要なシグナル分子を繋留する场としての新たな机能を有していることが示唆されました。本研究成果は、一次繊毛形成におけるペルオキシソームの新たな役割の存在の可能性を示したことに加え、繊毛病やペルオキシソームの形成不全によって引き起こされるペルオキシソーム病の病因解明に贡献することが期待されます。
本研究成果は、2017年3月10日発行のThe Journal of Biological Chemistry誌に掲載されました。